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2025/09/22

フィリピン 「1兆ペソ・マーチ」 腐敗撲滅を訴える

マニラ発 — 豪雨にもかかわらず、人々の怒りは収まらなかった。戒厳令布告から53年となる昨日、マニラやケソン市をはじめ全国各地の通りは「巨額汚職を糾弾する」同時多発の抗議行動で埋め尽くされた。

「1兆ペソ行進」の参加者たちは、洪水対策などインフラ事業向けとされた巨額の公金を着服したとされる政府・民間の関係者に対し、責任追及と処罰、さらには禁錮刑や死刑を求めた。また、腐敗の文化を根絶するための制度改革も訴えた。

午前中、抗議者はリサール公園で「ルネタ洪水」集会を開き、その後一部はメンディオラへ行進。午後にはケソン市のEDSA北向き車線を、EDSA神殿からピープルパワー記念碑まで数万人が埋め尽くした。バゴン・アリャンサン・マカバヤン(Bayan)のレナト・レイエス議長は、メンディオラでの小競り合いで負傷しつつも「国民の怒りは今年、より深まっている。市民はもう我慢の限界だ」と警告した。

組織側は正式にマルコス大統領の辞任要求を掲げてはいないが、レイエス氏は「人々がそう求めても不思議ではない」とし、「これはドゥテルテ派かマルコス派かという問題ではなく、誰であろうと汚職に関わる者は批判されるべきだ」と強調した。

今回の論争は、いわゆる「幽霊インフラ事業」を巡るもの。監視団体によれば、2023年から2025年の間に少なくとも1,185億ペソ(約20億ドル)が不正に流用され、環境団体はその実被害が180億ドル規模に上ると警告している。マルコス大統領自身も、致命的な洪水が防災インフラの欠如を浮き彫りにした後、7月の施政方針演説でこの不祥事を認めた。労組指導者レオディ・デ・グスマン氏は「マルコス、ドゥテルテ、公共事業道路省の役人や業者など、汚職に関わった者は全員投獄されるべきだ。腐敗は制度化されており、個人を罰するだけでは不十分。政治的世襲そのものを断たなければならない」と訴えた。

労働団体パルティド・ナン・マンガガワやセントロなども参加し、反世襲法の制定、比例代表制の改革、インフラ独立委員会への労働界の代表参加を求めた。ML党リストのレイラ・デ・リマ下院議員は「この抗議は戒厳令の記憶を呼び起こすと同時に、汚職への怒りの高まりを示すものだ。汚職を裁き投獄する以外、国民を納得させることはできない」と述べた。

主催者はリサール公園での参加者を8万人と主張したが、警察はドローン映像と災害対策局の監視に基づき約5,000人と推計。一方、ケソン市のピープルパワー記念碑では1万5千人以上が集まり、各種団体、著名人、汚職反対を掲げる政治家も加わった。

フィリピン国家警察元長官ニコラス・トーレ三世は「人々が怒るのは当然。我々も欺瞞にうんざりしている」と動画で連帯を表明。警察はおおむね平和的な集会と報告したが、EDSA沿いのキャンプ・アギナルド第4ゲート付近ではデモ隊とドゥテルテ支持者の一部が衝突した。

午後には北行き車線とEDSAバスレーンがデモ隊で埋め尽くされ、交通は完全に麻痺。車両は迂回を強いられ、警察は該当区間を封鎖した。集会にはフランシス・パンギリナン、バム・アキノ、リサ・ホンティベロス上院議員やケソン市のジョイ・ベルモンテ市長も出席。元イロコススル州知事チャビット・シンソン氏は現場でブーイングを浴びた。

また、一般市民からは「納税者として許せない」「子どもたちの未来が奪われている」といった証言が続出。修道女や人権弁護士、教会指導者も声を上げ、特に若者に対して「デジタル空間を真実の記録と連帯の場に活用するように」と呼びかけた。

地方都市でも大規模な抗議が展開され、ブラカン州マロロス市、バギオ市、カガヤン・デ・オロ市、ネグロス島などで数千人規模の集会が報告された。

アナリストは「今回の動員は洪水対策スキャンダルへの怒りだけでなく、長年罰せられてこなかった腐敗への深い幻滅の表れだ」と分析。抗議者たちは「信頼は繰り返し裏切られた。責任が問われなければ、未来そのものが奪われ続ける」と強調した。

「提供元」http://philstar.com

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