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カンヌ映画祭後、シルビア・サンチェス氏とアレンバーグ・アン氏が共同製作した日本映画がフィリピンで上映へ

映画プロデューサーのアレンバーグ・アン氏は、日本の青春映画『ルノワール(Renoir)』が追加資金を必要としていると知ったとき、女優でプロデューサーのシルビア・サンチェス氏を思い浮かべました。
この映画は、1980年代後半の日本を舞台に、思春期と家庭の問題に向き合う11歳の少年の物語です。今年5月、第78回カンヌ国際映画祭のメインコンペティション部門でワールドプレミアが行われました。監督は『PLAN 75』で高い評価を得た早川千絵氏。『PLAN 75』は、高齢化社会の日本を描き、フィリピン人介護士の存在にも触れたディストピア作品です。
アン氏(Daluyong Studios代表)は、昨年日本チームがフィリピンを訪れた際に、Nathan Studiosの創設者であるサンチェス氏を早川監督ら『Renoir』の制作チームに紹介しました。サンチェス氏は、すでに『PLAN 75』などの実績に感銘を受けていましたが、2025年のカンヌを目指しているという目標に心を動かされ、参加を決意したそうです。
「カンヌでの実績があるなら、信用できるし可能性も高い。昨年は私にとってカンヌは3回目。最初は視察目的で、何が“今”のトレンドなのか知りたくて行った」と、6月3日の記者会見で語りました。
「2回目は、Nathan Studios制作のアクション映画『Topakk』を持って行った。正式コンペではなかったけれどカンヌで上映されました。TVシリーズの国際見本市“MIPCOM”にも参加。そして昨年は、アンジェル・アキノさんと制作した短編映画『Silid』がカンヌ監督週間で上映されました。」
サンチェス氏はまた、Nathan Studiosを通じてフィリピンでの国際映画配給にも力を入れており、今回『Renoir』が第78回カンヌ映画祭に出品されたことは「夢が叶った瞬間」だったと語ります。
「赤じゅうたんに立てただけで私は満足よ!」と冗談交じりに話し、「アレンと制作チームを信頼して正解だった。来年もまたチャンスがあればいいな」と続けました。
2人のパートナーシップのきっかけは、サンチェス氏が初めてカンヌを訪れた際。アン氏によれば、「“カンヌに行ける映画を見つけて”と言われた時は、冗談かと思った」と振り返ります。
「でもその後、彼女が本気だとわかって。その時点で彼女はすでに『Topakk』を製作していて、その作品はロカルノ映画祭に行った。さらに彼女はカンヌで脚本賞を受賞した日本映画『Monster』の配給もしていたので、本気だとわかった」とアン氏。
以来、アン氏は「カンヌに行けそうな企画があれば彼女に声をかけている」といい、今回も監督との縁があったことで共同制作が実現しました。
金額は明らかにしなかったものの、『Renoir』の制作費のかなりの部分をサンチェス氏が負担したとのことです。ただし、2人は資金提供だけでなく、脚本チェックから撮影への立ち会いまで制作全体に関わりました。
「脚本の段階から相談され、“これで大丈夫か”“追加や質問はあるか”といった意見も求められました」とサンチェス氏。プロデューサー、女優の両方の立場から、日本映画制作のプロセスを学ぶ貴重な機会にもなったといいます。
アン氏も、「彼らはとても時間に厳しくて、無言のまま動きだけで撮るテイクが何度もあり、音響のためのシーンも多かった。工程が非常に細かかった」と振り返ります。
サンチェス氏は「3時間作業→1時間仮眠→また3時間作業→休憩というスタイルで、日本の働き方に驚かされました。真似したいけど難しい。でも本当にすごい」とコメント。
『Renoir』はフィリピン国内でもバタンガスのビーチで一部撮影が行われ、「ギリシャのサントリーニのようで、日本とは思えない景観だった」ためロケ地に選ばれました。フィリピン側は現地撮影全体を担当し、国際クルーとも密に連携しました。
「フランスや日本の映画人とも互角にやれると実感した」とアン氏。「資金提供だけでなく、実際に手を動かした共同制作です」とサンチェス氏も付け加えました。
『Renoir』にはフィリピンと日本のほか、シンガポール、フランス、カタール、マレーシアのプロデューサーも参加しています。
サンチェス氏は「主人公がフィリピン人ではないから“フィリピン映画”ではないかもしれないけれど、私たちフィリピン人が作品を支えました。私たちの力を証明できた」と語りました。
映画は今後も国際映画祭への出品を予定しており、日本とフランスでの公開が決定。フィリピンでは年内に劇場公開される予定です。
「提供元」http://philstar.com